2012年11月4日日曜日

悪童日記


 「大きな町」から来て、「小さな町」で暮らすことになった双子の物語。

 作中で固有の地名や人名は明記されない。
 物語の背景より第二次大戦下のハンガリーであることが推察される。

 戦時下の町は食べ物が尽き、人の心は荒廃している。
 現実は容赦なく残酷で、女は犯され、家畜や金品は強奪される。

 知能の高い二人の子供は、曇りの無いフラットな目で世界を眺める。
 そこには中途半端な憐憫も、倨傲もない。
 ただただ合理的な、生きるための意思がある。
 自発的に学習し、鍛錬し、狩猟し、商い、人と交わり、生き抜く術を体得していく。

 現実を生き抜くこと。
 その過酷さと歓びが凝縮された掌編。
   

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