2020年6月19日金曜日

マイケル・ジョーダン:ラストダンス


 1998年のNBAファイナルで伝説となったマイケル・ジョーダンのラストショットと、直後の引退へと至る軌跡を追ったNETFLIXオリジナル、ESPN制作のドキュメンタリー。全10話。

 バスケットボールを知る者にとって、マイケル・ジョーダンは特別な存在である。1990年代に彼が中心となって達成したシカゴブルズの2度のNBA3連覇(スリーピート)などの実績もさることながら、プレーや立ち居振る舞いの圧倒的な格好よさは類を見ない。跳躍力、シュートの技術、ここ一番の勝負強さを見れば、バスケ通の玄人から一般人まで誰もが鮮烈な印象を受け、心を動かす。

 本作はジョーダンの個人の物語としても味わい深いが、それ以上にシカゴブルズというチームの物語でもある。憎まれ役の経営者ジェリー・クラウス、名将フィル・ジャクソン、盟友スコッティ・ピッペン、悪童デニス・ロッドマンやいぶし銀なスティーブ・カーらの個性が光り、化学反応が生まれる。一人一人の人物の辿った歴史を掘り下げ、背景に迫っていくことでその味わいは増していく。当時のライバル達や記者など関係者達のインタービューも豊富で、贅沢な作りである。

 個人的な感想として、ジョーダンの偉大さも勿論だが、90年代のブルズやジョーダンにまつわる壮大な物語は、決してジョーダン一人でできたものではないということ。個性の強いチームメイト達やライバル達、世界中のファンやジャーナリストなど、共に熱狂し、反目し、時代を共有し、戦った全ての人たちのものである。バスケットボールという競技を通して、ここまで多くの文化・経済活動・物語が生まれたという事実を思うと、胸が熱くなる。 

 全10話の作品を見るのは久々の長丁場だったが、全く苦にならず、素晴らしい時間だった。以前、紹介したDVD『His airness』の10倍の質と量だと考えて差し支えないだろう。
     

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