2018年7月19日木曜日

6年目


 「世界一の精神科医って、どんなだと思う?」

 目の前に現れた相手のストーリーを適切に読み解き、最も必要なものを選択できる。必要な言葉。必要な薬。必要な環境調整。その選択のために、長年にわたる医学教育の過程があり、膨大な研究報告があり、日々積み重ねられる臨床現場における試行錯誤がある。生物学的なストーリー、心理モデルに基づく解釈、社会的・歴史的な文脈における位置付け。多面的で複合的な、不定形で予測し難い、完全に理解するのが困難な人間という存在の物語の読解。私の目の前に現れたあなたは、どんな道を通って、どんな風な経験を経て、どのような状態に至ったのか。あなたの人生の物語。その読解と解釈。物語を理解する力。

 そのような力を求め、その体得のための手段を探し続けて辿り着いたのが、このブログだったような気がする。いい漫画や小説を読み、いい音楽を聴いて、いい映画を観て、その体験をシェアする。得た感覚や知識を言語化する鍛錬の場とする。適当でいい加減に、無理せずゆるゆると続いていく。偶然に物語と物語が繋がり、化学反応が生まれたりもする。当初の熱い志は時間とともに醒めても、習慣となって手や脳に染み付いた動きが、半自動的に物語の感想を生み出し続ける。

 最近とみに忙しくて、更新頻度が落ちているが、そういう時期が続くと良質な物語に触れたくなる。心の滋養になるような、人間の理解をいっそう深めるような。日常のふとした選択や思考の癖が、ミスチル冲方丁の影響を受けていることに気づかされることがよくある。「ああ、あのときのあれだな…」と、『スラムドッグ$ミリオネア』的な感じでデシジョンメイキングすることがよくある。なんとなくの、言語化以前の識閾下での選択の精度をあげるために、これまでに読んだ物語が一役買っているとなんとなく確信している。

 世界一の精神科医は、最強の読解力を持っている。あらゆる物語を読み解き、適切な介入手段を選択し、目の前の相手に救いを与えることができる。そんなヒーロー像を昔から漠然と抱いていて、なんとなくいつもそういうものを目指している。そのために、もう少しこのブログも続けようと思っている。
    

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブログ アーカイブ