2018年3月9日金曜日

スリー・ビルボード


 いいらしい、と聞いたので前情報一切なしで映画館に観に行った作品。

 舞台はアメリカ中西部ミズーリ州の地方都市エビング(架空の町らしい)。場末という言葉がふさわしいこの町の、閑散とした郊外の道沿いに立っている3つの広告用看板が本作のタイトルになる。主人公の初老の女は、ある日、その看板に7ヶ月前の事件に関連したショッキングな内容の広告を出す。その挑発的な内容が町中で物議を醸し……という話である。

 興をそがないように筋を説明するのが難しい話であるが、全体として、尊厳を踏みにじられ、くたびれ、鬱屈した人間たちの醜悪な振る舞いが描かれる。彼らの多くは下品な言葉で悪態をつき、見下し合い、互いに傷つけあって生きている。憎しみは連鎖し、誰かに傷つけられた人間が、他の誰かを傷つける。舞台設定の方向性は『ドッグヴィル』や『マグノリア』が近い。不完全で、弱くて、醜く争い、傷つけあう憐れな衆生の世界。

 そんなヘイトに満ちた地獄のような世界で自分は何をするか、という話であると思う。押し付けの強くないやり方で、人間の善性に訴えかける表現が多くみられる。確かに素晴らしかった。
   

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