2018年3月23日金曜日


 綱淵謙錠の歴史小説。作者病没のため未完の作品である。初出は1996年。

 幕末の激動の時代の空気を膨大な歴史史料を豊富に参照しながら浮かび上がらせる歴史巨編である。主人公はフランス軍事顧問団の砲兵士官ブリュネ。画才があり、本作にも挿入されている彼の書いた行く先々の人や風景の精緻なスケッチが、繊細な感性と知性を感じさせる。メインのはずなのに出番がほとんどないが、その存在には圧倒的な魅力が宿る。

 じっくり精読するにはかなりハードだが、この重厚さの中にこそ宿る味わいがある。速読で飛ばした部分が多かったが、歳を取って幕末の物語の作品に多く触れてから読むとまた感慨深く味わえるかもしれない。贅沢な娯楽だ。
   

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