2015年12月26日土曜日

宇宙兄弟


 遅ればせながら漫画原作を最新刊(27巻)まで通読。

 軸にあるのは宇宙飛行士になった弟(日々人)の後追いで宇宙飛行士を目指すことになった兄(六太)の話。ユルく、ヌルい男である六太が諦めきれなかった夢を目指すその過程で、多くの人達に出逢い、それぞれの物語が重層的に絡み合っていく。

 基本的には誰かが誰かに力をもらい、遠くを目指していくという定型が続いていく。日々人、六太、シャロン、ケンジ、せりか、ブライアン・ジェイ、それぞれの家族、友人、同僚…etc.、それぞれ誰かにエネルギーを与え、その受け取ったエネルギーで誰かがいっそう遠くを目指す。己の限界を超え、恐怖を克服し、困難に挑んでいく。それぞれが背負った物語のために。

 登場人物にはみな愛があり、思いやりに満ちた性善説の世界が描かれるが、こういう物語で純粋培養されたお人好しは、現実世界では力道山みたいな卑劣な怪物に食い物にされてしまうだろうな、という懸念も湧いた。読む人に愛と勇気を与える良質な物語であることは疑いないが、人間の邪悪さへの免疫をつけるための毒が足りないという点が個人的には瑕疵に思える。

 とは言え、サクッと読める娯楽作品としては秀逸。NASAの機材や技術など、同時に読んでいた『火星の人』の描写の映像のイメージを補完してくれた。何より「人が宇宙を目指す」というロマン溢れる明確でストレートな隠喩が、読む人に力を与えてくれる。

 読んで楽しく、自分も頑張りたくなってくる、いい話。
    

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