2014年8月12日火曜日

架空の球を追う


 読みながら自分が一番好きな女性作家は森絵都だと再確認した。
 様々な日常の中で、何気ない人間同士の絆を描く短編集。11編入り。

 お気に入りは、30女の女子会の機微を描く『銀座か、あるいは新宿か』、夕方のスーパーで買い物する女の屈折した人間観察を描く『パパイヤと五家宝』、スペインの空港での老夫婦の一幕を描く『彼らが失ったものと失わなかったもの』。

 森絵都の作風を誰かに紹介する際には「大人向けのさくらももこ」と私は形容することが多い。世慣れして成熟した冷笑的な目線と、その下に見え隠れする愛がある感じ。溢れるアイデアを抑えた筆致で制御しつつ描き、くすっとくる笑いもじわりとくる感動路線もいい感じにまとめる。

 直木賞受賞の短編集『風に舞い上がるビニールシート』がもっと細切れになってコンパクトな小品が集まっているような作品。読みながら没頭でき、読後感もすっきり。飛行機での移動に丁度良かった。
    

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