2018年8月19日日曜日

ホーリーランド


子供世界と大人世界の間(はざま) 
そこにホーリーランドは存在する 
甘やかな法と暴力のリアルが支配する 
隔絶された世界 
その世界にーー彼はいた 
神代ユウ 
彼は確かにそこにいた

 いじめられっ子がストリートファイターになる話である。2000年から2008年連載。全18巻。主人公の神代ユウは15歳の高校1年生。引きこもった部屋で偏執的なほどに繰り返し習得した強力なワンツーを手掛かりに、街のアンダーグラウンドな世界でのしあがっていく。

 まず何より、作者の体験に基づくという格闘技の解説・描写がアツい。柔道、空手、レスリング、ボクシング…様々な武術を得意とする路上の格闘家が現れ、主人公のユウが戦いながら成長していく。武術の理論的解説が充実し、格闘シーンの迫真の描写でぐいぐい読ませる。『刃牙』よりもリアリティが高い。

 そして実存主義的なテーマ。『自殺島』と同じ作者が描く、私の最も好きな「不適応者が掴む適応の物語」である。学校という場所で激しい「いじめ」を受け(この平仮名表記のもつ欺瞞、卑劣さ、残酷さ)、存在を否定され、自分の居場所を失った少年の戦い。路上の喧嘩という現実世界における勝ち負け以上の、観念的な、自己救済のための必然性がそこにある。『ファイトクラブ』『マルドゥックスクランブル』に通じる、身体性な闘争を通した自己存在の回復といおうか。血を流し、人を傷つけ、リスクを負わなければ手に入れられない人間として大切なものがそこにはある。

 手に取り始めると止まらずに一気読み。こういう漫画を読んで生きていたい。
   

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