2016年10月10日月曜日

マルドゥック・ヴェロシティ [新装版]


 合本版を通読完了。オリジナル版と新装版の違いはよく分からんかった。

 『スクランブル』の敵役だったボイルドの過去の話。『スターウォーズ』でいうとエピソード1~3に相当。エリートの軍人だったボイルドがいかにして虚無へと堕落していったか、という軌跡を描く。

 読むのは2回目だったが、初回に読んだ時は生涯読んだ中で最もダークな気持ちになる本だった。全編を通して深く、重く、暗い。そして、グイグイ引き込まれる。何より、拷問を得意とするダークタウンの傭兵集団カトル・カールが怖すぎる。

 プロットが複雑だが、2回目に読むと以前より深く理解できた。大都市の闇を描くジェイムズ・エルロイ風のノワール+異能者集団の戦闘活劇を描く山田風太郎のエッセンス。そこに、ボイルド、ウフコックらの闘いが投影される。最強の知性と愛を持った道化クリストファーが断然格好いい。

 まあ、何も言わずに読んでほしい。そして、読んだ者同士で飲み屋で延々シリーズについて語り続けたい。筆者が最も好きな作品の一つである。特に「有用性」に関する議論は、社会人としての筆者自身のスタンスの根幹を形成しているように思う。

 そして『フラグメンツ』も読んだので、いよいよ完結編の『アノニマス』へ。
   

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