2014年7月20日日曜日

リリイ・シュシュのすべて


 リリイ・シュシュという女性歌手に救いを見出す、田舎の中学生の話。

 夏休み明けの新学期、過酷ないじめが始まる。傷ついて墜ちた魂が周囲を攻撃し、教室や友人関係の中に刺々しい空気が波及していく。暴力を加え、金品を奪い、性的に貶め、尊厳を踏みにじる。穏やかな田園風景とドビュッシーの清冽なピアノ曲を背景に、陰惨な負の連鎖の中で窒息し、圧し潰されていく少年や少女の魂。

 鑑賞時の胸糞の悪さは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』に匹敵する。そして、それは自分の小学校や中学校の記憶が眼前に浮かんで重なり、胸に生じた痛みのせいだという機序にやや遅れて気付く。主人公の少年はリリイ・シュシュ(salyu)の歌声の世界に逃避するが、自分にとってのそれはミスチルだったな、と観ていながら思った。(ちなみに、作中でミスチルという語がサブリミナルでステマしている)

 涙を流し、嘔気を催すほどに、現実世界の不条理に圧し潰された魂に、救いを与えるものは何か?
 観ながらずっと考えていた。自分にとって大切な映画の一つになった。
    

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