2021年公開のアメリカ映画。
監督は気鋭の中国系女性監督クロエ・ジャオ。
監督は気鋭の中国系女性監督クロエ・ジャオ。
舞台は2010年代、リーマンショック後のアメリカ。企業破綻による工場の閉鎖に伴い住まいを失った初老の女性が、季節労働を求め車上生活をしながらアメリカ国内を放浪する。主人公の女性ファーンを演じるのは『ファーゴ』、『スリー・ビルボード』で2度のアカデミー主演女優賞を獲得したフランシス・マクドーマンド。それ以外の出演者は、ほとんどが実際に放浪する当事者たちだという。
登場するのは、人生の盛りを過ぎた人々、くたびれた衣服、荒涼とした山野の風景。大志を抱いたり、希望や好奇心を抱いた若者は出てこない。定住せず、車上生活をすることを選んだ中高年の男女の日々が静かに、くすんだ色調で描かれる。彼らは共通して何かを喪い、何かを抱え続けて生きているが、その過程が詳細に説明されることはない。原作はノンフィクションで、アメリカに実在する彼ら、経済危機後に住む場所を失った「現代のノマド」を取り扱っている。
高城剛氏のメールマガジンで知り、何の気無しに観たが、なかなか味わい深かった。言葉で多くを語らず、表情や光の加減で見せる映画だった。通奏低音は悲しみ、ときどき与えられる喜びの微かな光。年齢を重ねるごとに、いっそう深く味わえるだろう。
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