2021年3月30日火曜日

九条の大罪


 『ウシジマくん』の作者の最新作。既刊1巻。
 キャッチフレーズは「いい弁護士は、性格が悪い」

 主人公はアンダーグラウンドな案件を扱う弁護士の九条という男。外貌はやさぐれた世捨て人風、物腰は柔らかい脱力系である。頭脳は明晰で、法の抜け穴を突き、依頼者の利益を確保する。

 テーマは法と道徳だろうか。
1巻では交通事故の加害者、違法薬物の売人の男が依頼者として登場する。人道上の問題がある案件であっても、九条は法律的な問題を解決するが、善悪のジャッジをしない。中立の目で世界を眺め、世間の評価にも、金銭的な報酬にも頓着しない。己の責務を淡々と果たし、多くを語らない。

 現代社会を生きる衆生の苦しみを描くという点においては『ウシジマくん』と共通する。作者が方向を模索している感もあり、匙加減をしているらしく、前作のようなエグい表現は控えめである。九条やその周辺の人物像はまだ掘り下げられておらず、その独自の行動様式に至るまでのストーリーがいずれ描かれると予想される。この先が楽しみな作品である。
   

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