塾経営に関わる女系家族を3世代にわたって描く森絵都の長編小説。
「NHKの朝の連ドラ」っぽい空気が全編を通して流れる。昭和の戦後の民主主義教育の黎明期から、受験戦争の過熱、平成のゆとり教育の弊害、貧困による教育の格差、など日本の教育にまつわる史実を交え、時代の中で奮闘する人々の人生が描かれる。
書評家に絶賛されていたので手に取ってみたが、納得のハイクオリティ。冷徹な洞察と温かい人情味の絶妙なバランス感覚が森絵都らしい。キレのある教育行政の分析を混ぜつつ、味わい深い人物たちの化学反応を描くのがうまい。緩急や伏線の仕込みが名人芸の域に達しており、読んでいてずっと楽しかった。個人的なお気に入りは国分寺。
本ブログ筆者が最も好きな女性作家であると再確認。過去の作品を読み返したくなった。
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