2015年6月3日水曜日

REFLECTION


 ミスチル史上最大の密度とボリュームを誇るアルバムがついに解禁。

  全23曲入りの{Naked}と厳選した14曲入りの{Drip}の同時発売で、雑誌のインタビューでの桜井さんに曰く「水商売の女の子がお店の中で見せる顔が{Drip}で、{Naked}はちゃんとした彼氏に見せる本当の私の顔」とのこと。ファンにとっては2013年夏に『REM』を聴いた時から焦らしに焦らされて、ようやく手元に届いたニューアルバムである。

 で、その内容。
 まず印象に残るのはギター、ベース、ドラムのバンドサウンドの骨格がはっきりしていること。シンセサイザーでの電子的な加工が得意な小林武史の比率を抑え、ミスチルのセルフプロデュース主体になった影響がはっきり出ている。そして、『幻聴』や『運命』あたりのキャッチーでポップな曲から実験的で好みの分かれる『斜陽』や『WALTZ』など、広く多彩な曲の揃え。音源の発売前からライブや映画や雑誌のインタビューで全体像を垣間見せたり、リスナーへの届け方も工夫している。

 全体の解釈。
 現実と夢想の対比が多い。『fantasy』の歌詞で顕著だが、鈍い苦痛を伴う生きる苦しみや失望と、歓びや希望に溢れた世界への期待。苦しみと歓び。闇と光。実験と懐古。原点回帰と新奇性追求。演奏者と聴衆。交互に描かれ対比が際立つ。アルバムのテーマを一言で言えと問われれば、「二律背反」と答えよう。ヘーゲルの弁証法的哲学用語で言うとテーゼとアンチテーゼが止揚し、その矛盾を克服しようする力を、化学反応が生み出すエネルギーを駆動力にして、進化し、更なる高みを目指していこうっていう気概。そういう姿勢(attitude)をいろいろな形で表現したのが、このアルバム自体もそうだし、アルバムのリリースに至るMr.Childrenというバンドの活動の軌跡である。

 たぶん、ファンにとってはいつまでも語り続けていたいアルバムになるでしょう。もっともっと聴き込んで、自分の中に生まれるであろう多くの情景や感覚に出逢うのが楽しみです。玄人も素人も、ディープなファンも最近好きになりはじめたファンも、全てのミスチルファンに薦めたい傑作です。

 そして、最強の一曲はやはり『未完』でしょう。この一曲が今のミスチルの全てを語っている。
   

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