ミスチル史上最大の密度とボリュームを誇るアルバムがついに解禁。
まず印象に残るのはギター、ベース、ドラムのバンドサウンドの骨格がはっきりしていること。シンセサイザーでの電子的な加工が得意な小林武史の比率を抑え、ミスチルのセルフプロデュース主体になった影響がはっきり出ている。そして、『幻聴』や『運命』あたりのキャッチーでポップな曲から実験的で好みの分かれる『斜陽』や『WALTZ』など、広く多彩な曲の揃え。音源の発売前からライブや映画や雑誌のインタビューで全体像を垣間見せたり、リスナーへの届け方も工夫している。
現実と夢想の対比が多い。『fantasy』の歌詞で顕著だが、鈍い苦痛を伴う生きる苦しみや失望と、歓びや希望に溢れた世界への期待。苦しみと歓び。闇と光。実験と懐古。原点回帰と新奇性追求。演奏者と聴衆。交互に描かれ対比が際立つ。アルバムのテーマを一言で言えと問われれば、「二律背反」と答えよう。ヘーゲルの弁証法的哲学用語で言うとテーゼとアンチテーゼが止揚し、その矛盾を克服しようする力を、化学反応が生み出すエネルギーを駆動力にして、進化し、更なる高みを目指していこうっていう気概。そういう姿勢(attitude)をいろいろな形で表現したのが、このアルバム自体もそうだし、アルバムのリリースに至るMr.Childrenというバンドの活動の軌跡である。
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