2015年5月30日土曜日

17歳のカルテ


 看護学校でのパーソナリティー障害の講義で紹介した映画。

 舞台は60年代のアメリカ。10代の少女スザンナ(ウィノナ・ライダー)は慢性的な空虚感を抱え、自暴自棄となってカジュアル・セックスを繰り返し、過量服薬を起こして精神科病院に入院させられた。そこには様々な精神疾患を煩う若い女性患者たちがいて、中でも自由奔放で妖しげな魅力を放つ少女リサ(アンジェリーナ・ジョリー)に出逢う。

 スザンナは境界性人格障害、リサは反社会性人格障害の典型例。病棟内の診療行為のあり方は突っ込みどころが多いが、昔の話なので良しとする。原作はスザンナの書いた手記(”思春期病棟の少女たち”)で実体験に基づいているそう。

 訳もなく苛立つ思春期の少女の心の奥底には深遠な精神世界があるという神話が生きていた20世紀の精神医学の姿を描いているように思う。勿体付けて描く程の深みはない、というのが久しぶりに観た上での筆者の感想。あるのは自己との対峙や言語的な内省が心的外傷に奏功するという精神分析の理論が生んだ幻想であり、2000年以降の精神医学を実践する身としては観ていて御都合主義の感は否めない。ただ、パーソナリティー障害の典型例がある映画である。

 実生活もパーソナリティー障害っぽい二人の名女優(失礼?)のオーラは本物。
 邦題はイケてない。
  

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