2015年2月22日日曜日

気楽に殺ろうよ 藤子・F・不二雄[異色短編集]2


 藤子不二雄のFの方(ドラえもんの作者)の短編集。猟奇趣味なAの方に比べて、人間への暖かい眼差しを恥じたり臆したりせずに表現する作風。とは言え、基本的には風刺で、サイコホラーやSFの奇妙な題材で人間性の本質にアプローチする。

 気に入ったのは食欲と性欲に関する恥の観念が入れ替わった世界を描く表題作”気楽に殺ろうよ”、独善的で欺瞞に満ちた超人の話”ウルトラ・スーパー・デラックスマン”あたり。中世のロマンスをSF的記号で再構築した”サンプルAとB”はいいセンス。

 全編を通して、昭和頃の古き良き日本にあった人間臭さや情感が漂う。21世紀以降のエゲツない凄惨な描写や体温低めな色恋話に欠けているものが残っている。ノスタルジックな読後感。
   

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