世にサウナブームを起こすことになったエッセイ本の文庫版。単行本版の初出は2011年、文庫版は2016年である。文章メインだが、挿絵も多く、ほぼ漫画の回もある。文庫版ではブーム発生後に描いたあとがき漫画がついている。
漫画版と同様に、作者がサウナに出会い、はまり込んでいく過程が描かれる。最初に世に出たこのエッセイ版には、漫画版の「サ道」に至る前の、精製されていない原料のような粗さがある。「ととのう」というワードの強調に象徴されるように、漫画版やドラマ版にはビジネスの匂いを感じるというか、編集部や広告会社などの脚色や演出が加わっている。こちらのエッセイ版ではもっと純粋に、新しい世界との出会いと戸惑い、一つずつ謎を解き明かしていく過程の妙味が味わえる。
水風呂に浸かりすぎのバッドトリップ、サウナ通いが頻回すぎて生じたと疑われる難聴(医学的妥当性は不明)など、ネガティブな話も書いている分、こちらには作者の本音とリアリティがある。作者がひそかに導師(グル)として崇める蒸しZ氏も、エッセイ版の方が深く観察されている。
疲れた頭でサクッと読むには最適の内容。サウナに行きたくなる。
0 件のコメント:
コメントを投稿