村上春樹のデビュー作。1979年が初出。「夏になると読みたくなる」という友人の言葉を思い出し、一泊旅行に持っていった文庫本を読了。
大学時代に一度読んだはずだったが、「主人公が鼠という親友とビールをいっぱい飲んで、投げやりに女と寝た」ということ以外に内容を全然覚えていなかった。また忘れるような気もする。生への達観と虚無、根源的な悲しみと、慰みとしての女性性(酒、料理、音楽、セックス)にすがる人間の話だ。
虚無感の慰みとしての耽美主義。徹底した日本の固有名詞の排除。後の村上春樹作品にも通底する文学作品の主題は既にここにある。意味の否定。感傷の否定。絶望に慣れ、虚無に至った非人間的な人間による事物の観察。滑らかな日本語。意表を突く比喩。
小説を読み慣れない人に理由を説明するのは難しいが、30になって、その面白さが分かってきた気がする。意味なんて無いのだ。虚無感を慰め、耽美に辿り着く、上質な暇つぶしとしての読書体験。
ビールをがぶがぶ飲みながら夏に読みたい。そんな本だ。
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