2014年5月27日火曜日

きっと、うまくいく


 2月にゼロ・グラビティが今年の映画観たナンバーワンになると断言してしまいましたが、すいません、こちらが1位です。

 インドの理系エリートが集まる工科大学の話。
 テーマは金城一紀の小説に通じる「社会構造を変えるための生き方」
 小気味良いテンポ、絶妙なプロット、インド映画お約束の歌や踊りも素晴らしい。

 生きる歓びが溢れ、元気が湧き出てくる、最高の娯楽映画。
 絶対お勧め。

    

2014年5月26日月曜日

スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬篇


 ホラーの名手スティーブン・キングが書いたホラーではない中編を集めた作品集。秋冬篇。
・スタンド・バイ・ミー(原題 The Body)
 映画にもなった、12歳の4人の少年が夏の終わりに線路沿いに歩いて死体を見に行く話。作家になった主人公ゴードン・ラチャンスの回想という形式で綴られる。少年達は一見すると年相応に無邪気で無鉄砲なようで、それぞれ養育環境に問題があり心に傷を抱えている。
 死体や吸血ヒルや暴力の描写など、とても美しいとは言い難い表象が多いけれども、揺れ動く少年達の不定形な心の流れが読み手に感傷を与える。ものの本によると「逆境を乗り越えて生き抜くレジリエンスの物語」とのことで読み始めたが、その通り、痛みを乗り越える少年の話であると思う。そのための儀礼は時として、醜悪で過酷な旅の形をとるのだ。

・マンハッタンの奇譚クラブ(原題 The Breathing Method)
 ニューヨークはマンハッタンの法律事務所で働く初老の男性である主人公は、ある日、知人に誘われ社交クラブを訪れる。そこには上質な家具、静謐な空気、興味深い蔵書と美味しい飲み物(スコッチソーダ)があり、紳士達が毎夜、奇妙で興趣に富んだ物語を披露し、互いに耳を傾ける。クリスマスの夜に語られる、婦人科医師を長年続けた男の話が作中のメイン。
 このブログのコンセプトに近いものを感じた。閉塞しがちで退屈な日常に命を与えるのは、醜悪なものであれ、非現実的なものであれ、活き活きとした物語なのである。
   

2014年5月15日木曜日

チャンネルはそのまま!


疫病が流行してもかからない人間がいる。 
種としての全滅を免れる… 
そのための「バカ枠」だ。

・・・

 北海道のローカルテレビ局に「バカ枠」として入社した新入社員が主人公。丹念に取材された地方局の仕事の実体を『動物のお医者さん』『おたんこナース』の作者がコメディタッチで描く。

 要領の良いスマートな優等生ばかりでは組織の持続的な成長は望めない、というのが根底にあるテーマ。行列から離れて自由に動くイレギュラーな蟻のように、奔放で空気を読まない主人公の雪丸花子が硬直しかけた組織に新たな視点とチャンスをもたらす。

 北海道のローカルネタが盛り沢山で、道民が読めばきっと5倍くらい楽しめる。主人公の会社(☆ほしテレビ)のモデルはHTB、圧倒的視聴率を誇る獰猛なライバル(ひぐまテレビ)はSTV。

 ちなみに後半で登場人物たちが読んでいる『働かないアリに意義がある』という本の作者は北海道大学の教員である。
   

2014年5月4日日曜日

オーシャンズ11


 犯罪者のオールスターでラスベガスのカジノの金を強奪しよう、という話。
 出演者も主役級のハリウッドスターのビッグネームが並ぶ。

 内容は普通に面白いクライム・サスペンス。
 ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツのオーラ溢れる立ち居振る舞いが楽しめる。
 
 個人的にはいつも何か食べてるブラッド・ピットが好き。
   

三びきのやぎのがらがらどん


 ノルウェーの民話を基にアメリカの絵本作家が描いた絵本。

 大中小3匹の同じ名前のヤギが橋を渡ろうとすると、橋の下に恐ろしいトロル(巨人)が居る。最後には情け容赦なくトロルが血肉を裂かれ木っ端微塵になるあたり、原始的な残虐さと生命力を感じる。教訓を込めようなんていう浅薄な下心を感じさせないのが清々しい。

 子供心にセンセーショナルな1冊。

魔法少女まどかマギカ 叛逆の物語


 テレビ版全12話(≒映画の前後編)の後の世界の話。

 続編の報を聞いたときに「蛇足じゃないか?」と思ったが、やはり蛇足だったという印象。抽象的な心情描写が多く、ファンサービスな描写が多いのも少し鼻につく。アニメ映画の売り上げ的には成功かもしれないが、面白いかと言われればあんまり。

 まどかマギカを楽しむためには、TV放映版全12話で完結させるのがベストかなと。文学的な記号や隠喩についての思弁を巡らせたい人以外には、あまりお勧めではない。

 とは言えネット上で見る限り評判は上々。
 内容の解釈を巡ってファン同士で議論するのが楽しい作品ではある。