2014年1月28日火曜日

ウッドストック 愛と平和と音楽の三日間


 1969年の8月15日からの3日間、ニューヨーク郊外の農地で開催された音楽祭であるウッドストック・フェスティバルのドキュメンタリー映画。ろくに整備もされていない野外の会場に全米から50万人の若者が押し寄せ、音楽を聴いて、裸になって、マリファナを吸って、ラブ&ピースな空気に酔いしれた。自然発生的に生じた奔流の中で多くの伝説が生まれ、60年代アメリカのヒッピー文化の記念碑的なイベントとなった。

 後世に与えた影響は大きく、現代日本のロックフェスもウッドストックの衝撃を受けた世代が牽引し、この空気や世界観の再現を試みていることがしばしばあるように思う。村上龍がsixty-nineで描いた高校での「フェスティバル」や、スティーブ・ジョブズの価値観の源流にあったものもここにある。2000年代の今となっては熱気や感動は過去のものとなり、残された記録を見ても当時の世代が実体験として味わった文化的衝撃を感じ取ることは難しい。それでも歴史的事実として、この時代を覆っていた空気を抑えておくと、その後生み出された多くの文化的意匠に対する理解が深まる。

 物質的、軍事的に繁栄を極めていた当時のアメリカの時代背景を考えると、個人的には「物質的に飽和すると大衆は左傾化する」という傾向の極大点という気がする。「音楽の力」は方便に過ぎない。生きる上での理想を探していた若者たちが、答えを探して集まった。いつの時代にもあった普遍的事象の表現型の一つではないかと思う。
   

2014年1月17日金曜日

幽遊白書


 筆者の人格形成に最も影響を与えた漫画作品の一つ。

 最初は霊体となった幽助が人助けをするハートウォーミングな短編の連作だったはずだが、生き返ってから妖怪とのバトルものに風向きが変わり、飛影の妹を助けに行くあたりから路線が確立し、闇に生きる者の描写がメインになる。

 何がいいって、登場人物同士の掛け合いの台詞がいい。作者が以前インタビューで語っていたが、作品中の会話は漫才を意識しているということ。「こいつはきっとここでこういうことを言いそう」という己の意識を登場人物の心情と徹底的に同一化せんとする霊媒師のようなスタンスで生み出されたと思われる。「俺は品性まで売った覚えはない」「右ストレートでぶっとばす」など、そのキャラクターの生き様や哲学が匂い立つ、魂を込められた言葉がいくつも出てくる。

 個人的には単行本17巻の魔界編以降の空気が一番好きだ。奴隷商人痴皇と軀の話や、雷禅の旧友のエピソードの雰囲気が最高にいい。そして、読み返すほどに桑原の重要性に気付かされる。後のレオリオである。たぶん。垂金権造の造形やデコピンで脳天を吹っ飛ばされる豚尻さんのような酷すぎる描写もいい。カバーの作者コメントや空きページの落書きのような企画も独特の興趣を感じる。

 作画の仕上げの雑さなんて問題にならない、他の作者には絶対に出せない味がある。
 子供の頃に読むならこういう本がいい。
 禍々しい瘴気の中で光る、美しい魂の物語。
   

2014年1月15日水曜日

シティ オブ ゴッド


 ポルトガル語で「神の街」を意味する名(Cidade de Deus)をもつブラジルのスラム街の子供達の物語。

 どんな風に悪は生まれるか、憎しみは連鎖するのか、どうして負の因果の連環を断ち切ることができないのか、この映画を観れば分かる。

 役者は現地の本物のストリートチルドレンを募って選ばれたという。麻薬と殺戮の連鎖が話のメイン。血しぶきと官能とサンバのリズムが全編を覆う。タランティーノ映画を彷彿とさせる陰惨さとコミカルなテンポも観ていて楽しい。

 生命の熱と息吹を感じる。かなり好きな部類に入る映画。
   

2014年1月13日月曜日

ターミネーター2


 前作では敵役だったターミネーター(シュワルツェネッガー)が味方となって未来からの刺客と戦う。
 敵役のT-1000は寄生獣や戸愚呂兄を彷彿とさせる特殊能力。
 むしろこの2体が戸愚呂兄弟の元ネタだったのか、と遅ればせながら確信した。

 医師をはじめ、精神科病院が大変イメージ悪く描かれているのが難点。
   

2014年1月11日土曜日

ターミネーター


 とりあえずおさえておくべき古典として。

 未来から送り込まれた無敵の人造人間からひたすら逃げるSF作品。
 人類が機械と戦争をしている未来の映像はスネ夫の従兄(スネ吉兄さん)の指南するジオラマセットを思わせるクオリティである。

 "I'll be back"が特別重要でないシーンの台詞であるというのは特筆すべき点であると思う。
   

2014年1月10日金曜日

ダイ・ハード


 年末年始に観た映画シリーズ。

 ニューヨーク市警の刑事であるジョン・マクレーンがクリスマス・イブに別居中の妻の勤務先のビルを訪れた所、不運にも狡猾で残忍なテロリスト集団に占拠された場面に居合わせる。偶然にも人質としての捕捉を逃れた彼は、武装したテロリスト集団相手に孤軍奮闘する。巨大なビルの中を駆け回り、軽口を叩きながら何度も決死の場面を乗り越え、敵の中核に近づいていく。die hardは「なかなか死なない奴」という意味。
 
 果敢さと反骨精神に溢れたタフな振る舞いに、20世紀アメリカのヒーロー像を感じる。
 分かりやすく格好いい。

 我が家ではクリスマス・イブに鑑賞。
   

2014年1月3日金曜日

永遠の0


 太平洋戦争の特攻隊員として命を落とした祖父について調べる青年の話。

 文庫は300万部売れているそうで現在日本の文庫本売り上げ歴代1位らしい。Amazonのレビューでは絶賛の声が溢れ、そして、戦争が主題の他の例に漏れず、ネット上では「戦争や特攻を美化している」「歴史的事実を曲解している」と一生懸命批判する人間がちらほら見える。

 私は作家として物語を編み上げることは「祈り」だと思っている。何故この題材を選んだか、何を伝えたかったか、何を望んでいるのか。制作者がその心中を語らずとも、生み落とされた物語は雄弁に語る。

 物語が進むにつれ、絶望的な状況下で信念に生きた一人の男の像が浮かび上がっていく。その軌跡を追うことで、先人への崇敬の念や、己の内側が浄化される感覚は生まれる。情愛や感謝を忘れ、即物的思考と倦怠の時代を生きる日本人に伝えたいメッセージが随所に込められている。
 
 元旦に読んでいた本だが、今年のベストになりそう。
 戦時の日本の真実を知りたい人がいたら、この本を最初に勧めたい。