2014年1月17日金曜日

幽遊白書


 筆者の人格形成に最も影響を与えた漫画作品の一つ。

 最初は霊体となった幽助が人助けをするハートウォーミングな短編の連作だったはずだが、生き返ってから妖怪とのバトルものに風向きが変わり、飛影の妹を助けに行くあたりから路線が確立し、闇に生きる者の描写がメインになる。

 何がいいって、登場人物同士の掛け合いの台詞がいい。作者が以前インタビューで語っていたが、作品中の会話は漫才を意識しているということ。「こいつはきっとここでこういうことを言いそう」という己の意識を登場人物の心情と徹底的に同一化せんとする霊媒師のようなスタンスで生み出されたと思われる。「俺は品性まで売った覚えはない」「右ストレートでぶっとばす」など、そのキャラクターの生き様や哲学が匂い立つ、魂を込められた言葉がいくつも出てくる。

 個人的には単行本17巻の魔界編以降の空気が一番好きだ。奴隷商人痴皇と軀の話や、雷禅の旧友のエピソードの雰囲気が最高にいい。そして、読み返すほどに桑原の重要性に気付かされる。後のレオリオである。たぶん。垂金権造の造形やデコピンで脳天を吹っ飛ばされる豚尻さんのような酷すぎる描写もいい。カバーの作者コメントや空きページの落書きのような企画も独特の興趣を感じる。

 作画の仕上げの雑さなんて問題にならない、他の作者には絶対に出せない味がある。
 子供の頃に読むならこういう本がいい。
 禍々しい瘴気の中で光る、美しい魂の物語。
   

2 件のコメント:

  1. 映画「誰も知らない」の主題歌であるタテタカコの「宝石」という曲に
    「異臭を放った宝石」という歌詞があって当時こころを打たれたのだけれど
    幽々白書もkskのブログもそんな気がします。

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  2. 字面が若干あれだけど(笑)、精製される前のprimitiveな感性を大切にするってことだね。
    理詰めな大人が見失いがちな輝きを忘れずに、できるかぎり誰かに届ける努力をしています。

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