2013年6月28日金曜日
2013年6月22日土曜日
2013年6月15日土曜日
ヨブ記
正しい人に悪いことが起こる『義人の苦難』が主題の旧約聖書の諸書の一つ。
神を畏れ敬い、家族や牧畜を富ませ、清く正しく潔白を守り、ひたすら正しく生きるヨブという男がいた。「ヨブほど正しい人はいない」と言って自慢する神に、サタンが「あいつの財産を奪って追い込めば、きっと神を呪いますよ」といちゃもんをつけ、「OK. じゃあ試してみろ」という神の気まぐれで、ヨブが無慈悲に追い込まれる。
子供が死に、財産を失い、皮膚病に罹り、あらゆる災難に見舞われ、打ちひしがれたヨブは友人らと論争する。「なんで正しく生きてきた俺が、こんな目に遭わなきゃならんの?」と。
オチは「神は人間の理解を超えているから、それでもひたすら祈るべきだ」という若造(エリフ)の助言に従い、祈り続けると神が赦してくれて、追い込まれる前よりいっそう富むというもの。
SF作家のテッド・チャンは最後にヨブが救われるのは納得いかないと言っている。曰く「もしこの話の作者が美徳は必ずしも報われるものではないという考えを本気で主張しようとするなら、話の結末でヨブはすべてを奪われた状態のままでいるべきではないだろうか?」(この本の作品覚え書きより)
胸クソ悪くなる物語だが、人生の不条理に挑むための良き教典である。
2013年6月5日水曜日
マルドゥック・スクランブル
少女娼婦のバロットがネズミ型万能兵器のウフコックらと共に欲望と悪徳が渦巻く産業都市(マルドゥック・シティ)の暗部と戦う。かつて都市の病理に踏みにじられ、事故に見せかけて殺されかけたバロットは再び生きるために、軍事技術によって生み出され、戦争の終結によって廃棄の寸前に追い込まれたウフコックは己の有用性を証明するために。作者の冲方丁曰く「少女と敵と武器についての物語」。
ジャンルとしてはSF小説。扱うテーマは実存。特に後半のカジノシーンは圧巻であり、その展開は鳥肌もの。衒学的な会話もいい。そして、文庫版の作者あとがきや鏡明の解説にも物語への愛が溢れている。
筆者が大学生の時に出会った、最も好きな物語の一つである。不適応者が掴む適応の物語。込められた作者の情熱や思念が、読む者に力を与える。ぜひ多くの人に読んで欲しい。