正しい人に悪いことが起こる『義人の苦難』が主題の旧約聖書の諸書の一つ。
神を畏れ敬い、家族や牧畜を富ませ、清く正しく潔白を守り、ひたすら正しく生きるヨブという男がいた。「ヨブほど正しい人はいない」と言って自慢する神に、サタンが「あいつの財産を奪って追い込めば、きっと神を呪いますよ」といちゃもんをつけ、「OK. じゃあ試してみろ」という神の気まぐれで、ヨブが無慈悲に追い込まれる。
子供が死に、財産を失い、皮膚病に罹り、あらゆる災難に見舞われ、打ちひしがれたヨブは友人らと論争する。「なんで正しく生きてきた俺が、こんな目に遭わなきゃならんの?」と。
オチは「神は人間の理解を超えているから、それでもひたすら祈るべきだ」という若造(エリフ)の助言に従い、祈り続けると神が赦してくれて、追い込まれる前よりいっそう富むというもの。
SF作家のテッド・チャンは最後にヨブが救われるのは納得いかないと言っている。曰く「もしこの話の作者が美徳は必ずしも報われるものではないという考えを本気で主張しようとするなら、話の結末でヨブはすべてを奪われた状態のままでいるべきではないだろうか?」(この本の作品覚え書きより)
胸クソ悪くなる物語だが、人生の不条理に挑むための良き教典である。
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