2020年2月29日土曜日

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド


 2019年、最も観たかった映画の一つ。こちらもアマゾンプライムで視聴。

 1969年に実際にあったマンソンファミリー襲撃事件がモデルで、本作はそのパラレルワールドの物語である。レオナルド・ディカプリオは落ちぶれつつあるハリウッドスターを演じ、ブラッド・ピットがその旧友にして付き人の陽の目を浴びないスタントマンとして登場。名物の無駄な長話はないが、随所に監督クエンティン・タランティーノ節ともいえる癖のあるシーンがある。

 特筆すべきは、1970年頃のアメリカの空気の再現度。冗長なカット割りや展開も、当時の空気感の再現に一役買っている。映画業界のトリビアが多数反映されているらしく、そのあたりが映画評論の玄人受けする理由なんだろう。映画に詳しい人ほどに、多くを語りたくなるであろう映画であるとは思う。

 ただ、一般受けするかは微妙。単なる娯楽を求める層には受けがイマイチな気がする。私も途中微妙だと思ったが、最後まで観たら背景を調べて、また観たいと思った。そんな映画だ。くたびれたおっさんの友情にはグッときた。
   

2020年2月24日月曜日

ジョーカー


 アカデミー賞で話題の2019年作品。
 アマゾンプライムでレンタルできたため鑑賞。

 基本は、いわゆる「無敵の人」の話だった。40代、貧困層、独身、心身に異常をきたした母親を介護し、自身も精神を病み、社会福祉サービスを必要としている。アメリカの格差社会の下層。何も失う者のない男の話。悲惨な現実を直視せず、空想で己を慰めて生きている。アカデミー作品賞を受賞した『パラサイト』もそうらしいが、世界中で格差社会がトピックのようである。

 主人公(ジョーカー)を演じるホアキン・フェニックスの演技は圧巻だが、何より全体に構成の妙が光る。どこまでが空想で、どこまでが現実なのかの境目が曖昧で、それを考えるのが、鑑賞後の楽しみにもなる。確認のために何度も観たくなる作品だろう。抑えの利いた色調や音楽も、絶望に覆われた町の空気感に見事にマッチしている。

 美術、テーマ、演技等の総合力が高い大人の娯楽映画だろう。観てよかった。