世界のクロサワ、黒澤明の出世作。1950年(昭和25年)公開。
舞台は平安末期の京都。荒れ果てた羅城門の下で、襤褸をまとった2人の男が雨宿りをしているとこから物語が始まる。2人は山科の山道の藪の中で男の死体が見つかった事件の顛末について検非違使(けびいし、平安時代の京都の裁判所)の取り調べを受けた帰りだった。そこにもう1人の男が現れ、話を聞く中で、見る者によって様相が異なる奇怪な事件の、その真実が徐々に明らかになっていって…という筋である。
作品としては、芥川龍之介の短編小説の『藪の中』と『羅生門』を融合させ、黒澤映画のエッセンスを加えた、というところ。人は惨めで、弱く、己の尊厳や利得のために嘘をつき、他人を食い物にする生き物である。そんな衆生が溢れるこの世こそが地獄ではないか、と映画の中の登場人物は語る。その救いを黒澤明は何に求めているのか。そんな視点で考えると、彼の映画作品のテーマは一貫しているように思える。
全体に、芸術性と娯楽性が同居しており、今観ても面白い。88分という尺も気軽に観られてよい。そして、三船敏郎の存在感が半端じゃない。映像、音楽、演技、いずれも質が良く、当時のクリエイターたちの矜持と威厳を感じる。日本人なら観とけよ、と多くの人に薦められる作品であろう。
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