2017年2月26日日曜日

「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち


 厚木市幼児餓死白骨化事件(2015年逮捕)、下田市嬰児連続殺害事件(2014年)、足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件(2015年)の3つの親による子殺しの事件に焦点を当て、作者が現場や関係者を取材しながら当事者達の人物像を追っていくノンフィクション。

 本書の特色は、被害者の子、加害者である親、その親を育てた親、3世代にわたって生活史を追っていくという構成。その取材の過程を通して、加害者に残虐非道な極悪人というレッテルを貼って一面的に報道されがちなマスコミの報道とは異なる側面が見えてくる。虐待や殺害は個人の一時の感情だけで起きたわけでは決してなく、世代を超えた因果が集約し、我が子の殺害という形で顕現していることがよくわかる。「こんな環境で育ってまともな人間になるわけがない」という劣悪な環境が連鎖していく。

 『ウシジマくん』同様、精神科医、臨床心理士などの「心の専門家」になりたい人に推奨したい1冊である。人間らしい心など到底育むことができない、醜悪で絶望的な家庭の姿を知ってほしい。
   

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