2017年1月26日木曜日

すばらしい新世界


 ジョージ・オーウェル『1984年』と並び評される英国ディストピア小説の新訳版。
 オルダス・ハクスリー著。1932年作品。

 人工授精と幼児期からの条件付けで人間性を徹底管理される未来の社会が描かれる。所属する社会階層は生まれつき定められ、容姿や能力もデザインされ、国家が推奨するフリーセックスとドラッグに耽る人々に悩みはない。そんな世界に馴染めない上層階級のマルクス・バーナード、文明の外の世界で育った「野人」を軸に物語は進む。

 後半の野人と世界統制官のやりとりが最高だった。何故このような世界がデザインされたかという動機が赤裸々に語られ腑に落ちる。万人が幸福を享受する最大多数の最大幸福な社会を目指すとこうなるということだろう。結果として、個人に固有な価値や真実が犠牲になる。

 テーマは『PSYCHO-PASS』など後世のディストピア作品に通じる。2010年代の今読んでも色褪せない普遍性がある。大森望の解説を読んで、伊藤計劃『ハーモニー』をまた読みたくなった。
   
    

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