今年読んだ小説ではベスト。というか、生涯これまで読んだ長編小説の中でも個人的には最上位クラス。筆者の嗜好にどハマリし、読んでいてひたすら心が動かされ、考えさせられ、読み終えた時に「いい本読んだな」と思った。
作者は長編小説のクオリティで名高いアメリカの小説家ジョン・アーヴィング。書評家大森望がオールタイムベストに挙げていた『ホテル・ニューハンプシャー』、大学時代の友人の友人(会ったことはないたぶん沖縄の人)が生涯最高の本として挙げていた『オウエンのために祈りを』も面白かったが、個人的に一番は間違いなくこの本。
で、どういう話かというと、ニューハンプシャーに生きる一人の小説家の生涯と、その周辺の話である。アーヴィング節ともいえる皮肉家でユーモラスな主人公の生き方と、その周辺の愛おしくも残酷な世界の話。強姦被害や性転換などの性的な異常事態、身体的障害、いびつな母性愛、突然の死別、熊、などが出てきて、明るいムードだが展開がエグい。そして、考えさせられる。愛とは何か、死とは何か、人は何のために生きるのか。
現実世界の残酷さから目を逸らさず、等身大の愛がある。筆者が物語に求めているものが、精巧で豊穰な模範的作品として眼前に提出されたような感覚があった。こういう小説をもっと読みたい。残酷で、愛があり、面白く読める。心が強くなりそうなやつ。
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