2016年6月8日水曜日

TEAM OF TEAMS (チーム・オブ・チームズ)


 米陸軍の特任部隊を率いて中東でAQI(イラクのアルカイダ)と戦った元陸軍大将が記した組織マネイジメントの本。副題は「複雑化する世界で戦うための新原則」。

 要諦は「通信技術が劇的に変化した21世紀においては、効率を追求して細かく要素に分けられた堅固な構造をもつ組織ではなく、迅速で柔軟な対応ができる一体感を伴ったチーム作りが大切である」ということ。精鋭の兵士と最新の装備をもつ特殊部隊が、民間人の寄せ集めのAQIに苦戦した原因を研究した結果、携帯電話とインターネットの登場で人間同士の連携と相互作用が強くなった2000年以降の戦場においては、上司の指令や承認を待つトップダウンのピラミッド型組織では状況変化のスピードに対応できないという結論に至る。本書作者のマクリスタル大将を中心に米軍は組織の構造や文化に関して改革を行い、状況適応力を向上させ、(2010年に米軍が撤退したため壊滅させるには至らなかったにせよ)AQIへの勝利に至った。

 思い出したのは稲盛和夫(京セラ創業者)の「アメーバ経営」。筆者自身はバスケットボールやっていた頃にこういう本をもっと読みたかった、といつも思う。その後悔は昇華され、病院の仕事においては、目的の共有や連携を意識するteam oriented(チーム志向)な発言や振る舞いをするよう気をつけるようにはなった。チームの構成員全員の能力を最大限活かせば、多くの場面において強大な敵に打ち勝つことができる。

 複雑系に挑むのは戦争もサッカーも株も医療も同じ。元大将の経験に基づく回想と考察には、あらゆる分野に通じる豊かな示唆が沢山ある。変化に適応するレジリエンスが勝敗を分ける時代だ。目的の共有、リアルタイムで変化する状況への柔軟で迅速な対応、それを可能にする組織構造と文化的土壌を育むマネイジメント。それが情報溢れる21世紀世界での勝利への常道。

 具体例は、GIANT KILLINGに大体書いてある。
    

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