ロシアの医師であり劇作家でもあったチェーホフ(1860~1804年)の4大戯曲のうち、最初の2つ。
『かもめ』(1896年)
若い文科系男子の悲劇。高尚で前衛的な戯曲を書いても理解されずくすぶっていた男が、売れっ子作家に意中の娘を持っていかれる。
『ワーニャ伯父さん』(1897年)
真っ当に働いてきたおっちゃんの悲劇。教授をリスペクトして献身的に長年働いてきたワーニャ伯父さんが、浮世離れした知識人である教授の無邪気な決断に蹂躙される。
2編ともに、日の目を見なくても真面目に生きようとする庶民が、社会的地位の高い人物に大事な所を持っていかれる。ミュージシャンを目指す若者とか、企業勤めの中堅社員とかに置き換えると現代社会にも通じるだろう。
大きな事件が起きなくとも、登場人物の内面の変化に重点を置いて表現するのがチェーホフの特徴らしい。平凡な人生に潜む悲劇を丹念に描くスタイル。『渡る世間は鬼ばかり』の19世紀ロシア版といえるかもしれない。
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