2014年12月6日土曜日

ここがウィネトカなら、きみはジュディ


 大森望編、海外作家の時間SFの短編小説のオムニバス。1950年代の古典から2000年以降の新作まで全13編を収録。世界的にはSFといえば宇宙開発ものが王道であるが、時間SFが花形であるというのは日本特有の現象らしい。職場の昼休みに1編ずつ読むのにいい感じだった。お気に入りは下記。

 商人と錬金術師の門(テッド・チャン)
 アラビアンナイトの世界観で綴られる中編。この話が読みたくて買った本だったが、期待に違わぬ完成度。くぐると未来や過去に行ける門の話で、成功、過ち、性愛、成熟を重層的な作りで味わわせてくれる。傑作。

 彼らの人生の最愛の時(イアン・ワトスン&ロベルト・クアリア)
 ベンジャミンバトン的に時間を逆行する男女の邂逅。マックドナルドというチープな舞台装置など、馬鹿馬鹿しくて楽しい。

 しばし天の祝福より遠ざかり・・・(ソムトウ・スチャリトクル)
 同じ1日が何度もループする話。ループ時間中に行動選択の余地はないが、ループ前に約2時間の自由時間がある。クロスチャンネルやシュタインズゲート的な孤独な戦い。

 ここがウィネトカなら、きみはジュディ(F・M・バズビイ)
 カート・ヴォネガットのスローターハウス5的な「痙攣的時間旅行者」の男女のロマンス。不思議で、甘く、切ない。

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