2014年3月27日木曜日

レヴォリューションno.3


 「一番好きな小説家は誰か?」と問われたら、金城一紀と答えることが多い。ドストエフスキーやヘミングウェイや三島由紀夫と答えた方が格好がつくことは承知しているが(実際TPOの都合上そういう答えをする場面も多いんだが)、本音を言わせてもらえれば間違いなく『GO』やこの作品の作者である彼の名を挙げたい。
 
 その作風とはどんな性質か。
 笑えて泣ける。これに尽きる。

 都内屈指の偏差値の低さをもつ底辺高校の男達がゾンビーズというチームを結成し、近所のお嬢様が通う女子高の学校祭への潜入に挑む表題作と他2編を所収。アホな偉業に本気で挑む情熱の裏には、深い悲しみを乗り越えた悟りがある。読むと生きる力が湧いてくる。

 誰に勧めても面白いという感想が返ってくるテッパンの娯楽小説。
 久しぶりに読み返してみたらやっぱりハンパなかった。

 オススメっす。
  

2014年3月23日日曜日

ビューティフルマインド


 「ゲーム理論」の産みの親、ノーベル経済賞学者ジョン・ナッシュの生涯を描いた作品。
 
 実在の人物の生涯がベースになっているため調べればすぐに分かることだが、ネタバレしないように人に説明するのが難しい映画である。変人な天才ジョン・ナッシュが政府の陰謀などトラブルに巻き込まれて苦労する話。

 2001年のアカデミー作品賞を受賞しているが、娯楽作品としては今イチ。
 実話自体がいい話なので、筆者は職場の心理教育の際に紹介することにしている。
   

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン


 実在の詐欺師フランク・アバグネイルの生涯をモデルにした映画。

 監督スティーブン・スピルバーグは捨て子の物語を創り続けてきたとどこかの評論で読んだが(伊藤計劃か阿部和重だったと思う)、その例に漏れず原作(邦題:世界をだました男)を換骨奪胎し、喪った家族との日々への感傷を抱き続ける寂しい青年の物語になっている。レオナルド・ディカプリオ扮する浮世離れした色男を、人生経験豊富な大人の風情漂うトム・ハンクス扮する刑事が負う物語になっている。構図がこの間観たウルフ・オブ・ウォールストリートに似ている。

 個人的には詐欺師としての実像にフォーカスした原作の方が好き。

 映画は女子供の受けを狙ってエンターテイメントしている感じ。
   

2014年3月10日月曜日

悲しみよ こんにちは

 
 フランス人の17歳の女の子が寡夫の父親とその愛人二人と南仏の別荘で過ごす話。女たらしの父親との暮らしを愛するそれなりに聡明で奔放な主人公セシルが、愛人相手にいろいろ画策する。作者フランソワーズ・サガンが18歳で書いた処女作。

 情事が思考の大部分を占めるフランス人の思考様式が分かる。哲学や文学の格調高い用語を弄しても、人間って結局こんなもんだよね、という悟りに近づける好著。