2014年2月12日水曜日

海賊とよばれた男


 出光興産の創業者である出光佐三をモデルにした半伝記小説。

 主人公国岡鐵三は第二次世界大戦の敗戦後、焼け野原となった東京で仕事も資産も失ったにも関わらず1000人近い国岡商店の社員を一人も馘首(クビ)にせず、復興のために経営を再開すること決意した。民間の一企業でありながら官僚組織や石油を扱う外資の多国籍企業(メジャー)など巨大な敵と何度ともなく渡り合い、幾多の困難に直面しながらも、企業の利益より日本国の復興や人間の尊重を貫いた。不屈の闘志と揺るがない信念を持って戦い続けた男の記録である。

 2011年の東日本大震災を経験し、意気消沈した日本人に誇りと勇気を与えたいと作者の百田尚樹が一念発起して半年かけて書き下ろしたそう。脚色もあるんだろうが、かつて実在したという登場人物たちが皆、立派すぎて驚く。国岡鐵三とその仲間達のひたむきさや高潔さに胸が熱くなり、むしろ、日和見や妥協に逃げてしまう自分や現代人の脆弱さに気恥ずかしくなる。大義のために滅私を貫く人間の美しさを描くのが氏の作風のようである。

 大事を為した風雲児の痛快な一代記であるが、永遠の0と同じく近代史の教養の書でもある。道徳、侠気、客観的な歴史的事実の把握など、現代の日本に足りなかったものがつまっている。
   

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