2013年7月23日火曜日

1年目




    Heal the world
    Make it a better place
    For you and for me
      and the entire human race
    There are people dying
    If you care enough for the living 
    Make a better place for you and for me

    Heal the world / Michael Jackson


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 このブログは筆者の意思表示の手段として存在している。

 筆者の将来の夢の一つは「世界中で漫画喫茶を経営すること」である。正確には漫画喫茶ではないかもしれない。そのカフェにはきっと、店長やスタッフの趣味が全開で選び抜かれた漫画や小説、映画のDVDやCDアルバムが置いてある。快適なソファがあり、観賞を邪魔しないBGM(きっとBrian Enoあたり)が静かに流れ、コーヒーと軽食があり、物語を愛する人々が集まってくる。そこで人々は良質な物語に出会い、物語への愛に感化され、少しだけその人の物語が良い方向に向かう。

 ジョージ・オーウェルの1984年はスターリンの恐怖政治を瓦解させ、キャプテン翼のアニメを見てサッカーを始めたジダンはバロンドールになった。キリスト教への深い信仰はうつ病の高リスク患者の発症率を有意に減少させ、世界中の人々がドラゴンボールの話題で友達になれる。アフガニスタンやスーダンや中国の農村部にいい感じの漫画喫茶があれば、20年後くらいに世界の紛争が少し減るだろう。

 真に人生を救うのは、世界を変えることができるのは、物語の力ではないだろうか?

 筆者の人生も無関係ではない。両親が離婚し、金銭的な余裕は失われ、地方都市の機能不全な家庭に育った子供は、非常識で、愛情に飢え、自暴自棄な社会不適合者になると相場は決まっている。そんな祝福されなかった子供に希望を与えるものは何か?
 なけなしの小遣いで買い集めたドラえもんや、こち亀や、スラムダンクや、幽遊白書。レンタルビデオ店で借りたショーシャンクの空にのDVDやミスチルのCD。文庫で読んだ罪と罰やレ=ミゼラブル。生きていくための理想を、戦い抜くためのヒントを、やりたいことを見つけるきっかけを、手に入れることができたのは―――きっと物語の力だった。

 世界中のどこにでもあって、誰もが手軽にアクセスできる場所。手触りがあり、いい感じの空気があり、本当に自分が好きだったものを思い出せる聖域。Starbacks cafeやApple storeやPatagoniaのショップみたいに、そこに足を運んで、空気を肌で感じて、何かを感じとって、何かが変わっていくような、そういう空間。

 そんな「物語に出逢える場所」の経営に必要な経営哲学と仲間。そういうものを探すために、育むために、このブログは続けられている。そしてその経営を実現するための集団が「ナラティブ研究会」なのである。


 …というわけで、会員を募集中です。このブログに1回でもコメントすると会員になれます。不定期に集まって、経営予定のカフェや好きな作品についてダラダラ語り合う座談会が主な活動です。

 今はまだ貯金は7万円くらいで、会員は5人くらいだけど、10年ブログが続けば実現する気がしています。500万円くらい貯めて、会員が10人くらい集まれば、動き出せそう。最初の店舗は北大の近くがいいかな。

 生涯かけて、そんな勝負が出来ればいいと思っています。天地明察みたいに。
 10年続くかどうか、勝負だ。

2013年7月14日日曜日

フルメタルジャケット



 full metal jacket = 完全被甲弾
 ヴェトナムに派兵されるアメリカ海兵隊の話。

 それは非人間化のプロセス。
 惑わずに、ためらわずに、標的を殺戮するための機械になるための。

 上官が浴びせる卑猥で乱暴な言葉遣いは人間性の破壊に一役買っている。神や性といった神聖なるものをたえず冒涜することによって、情緒や道義心を麻痺させていく。一瞬の逡巡が自身の死や部隊の全滅を招く場面において「殺される前に殺せる奴」を作っていく。

 兵士でありジャーナリストであるジョーカーに残った人間性の残滓が、滑稽な歌と行進に飲み込まれていく。
 悲惨な事実を滑稽に描く、カート=ヴォネガット的な風刺を感じる。
   

2013年6月28日金曜日

ブエナビスタソシアルクラブ


 キューバの老ミュージシャン達が発掘され、再結成し、大舞台で演奏して観衆を沸かせるというドキュメンタリー映画。

 物資不足で老朽化が目立つハバナの街並には似つかわしくなく、町行く人々は楽しそうだ。その謎の答えを、音楽という一つの道に生涯を捧げ、晩年に至った老賢達の渋い笑みが教えてくれる。

 筆者も昨年キューバに行ったが、その辺歩いているおっちゃんは大体あんな感じ。金はなくとも、贅沢品はなくとも、葉巻と音楽と恋心があれば人生は楽しいのだという、シンプルで普遍的なメッセージがそこにはある。
 
 いい映画だと思うが何回観ても途中で眠くなるため、通しで全部鑑賞できたことはない。
   

アラジン


 娘の情操教育にDVDを買ったため小学生の時以来久しぶりに観たが、やはり素晴らしい映画だった。

 アラビアンナイトの世界の異国情緒。身分違いの男女のロマンス。奸臣ジャファーとの戦い。陽気な魔神ジーニー。エンターテイメントの黄金律が凝縮されている。

 今観るとテーマは「自由」だったのか。主題歌のA whole new worldはしっかり主題歌している。恋人と共に魔法の絨毯に乗って飛び回る星空。囚われの身から自由へ。そのイメージは生きる歓びを目一杯体現している。

 日本語吹き替えは羽賀研二のアラジン、山寺宏一のジーニー、毛利小五郎のイアーゴ以外考えられない。特に山ちゃんが圧巻。
  

2013年6月22日土曜日

青い春



 1990年頃の不良漫画の短編集。
 ろくでなしブルースや湘南純愛組のような情熱やカタルシスはなく、ただひたすら下品で、無気力で、全編を覆う倦怠感に息が詰まる。岡崎京子作品に近いものを感じる。

 好きなのは「しあわせなら手をたたこう」と「夏でポン」。
 純文学って感じ。
   

2013年6月15日土曜日

ヨブ記


 正しい人に悪いことが起こる『義人の苦難』が主題の旧約聖書の諸書の一つ。

 神を畏れ敬い、家族や牧畜を富ませ、清く正しく潔白を守り、ひたすら正しく生きるヨブという男がいた。「ヨブほど正しい人はいない」と言って自慢する神に、サタンが「あいつの財産を奪って追い込めば、きっと神を呪いますよ」といちゃもんをつけ、「OK. じゃあ試してみろ」という神の気まぐれで、ヨブが無慈悲に追い込まれる。

 子供が死に、財産を失い、皮膚病に罹り、あらゆる災難に見舞われ、打ちひしがれたヨブは友人らと論争する。「なんで正しく生きてきた俺が、こんな目に遭わなきゃならんの?」と。

 オチは「神は人間の理解を超えているから、それでもひたすら祈るべきだ」という若造(エリフ)の助言に従い、祈り続けると神が赦してくれて、追い込まれる前よりいっそう富むというもの。

 SF作家のテッド・チャンは最後にヨブが救われるのは納得いかないと言っている。曰く「もしこの話の作者が美徳は必ずしも報われるものではないという考えを本気で主張しようとするなら、話の結末でヨブはすべてを奪われた状態のままでいるべきではないだろうか?」(この本の作品覚え書きより)

 胸クソ悪くなる物語だが、人生の不条理に挑むための良き教典である。
  

2013年6月5日水曜日

マルドゥック・スクランブル



 少女娼婦のバロットがネズミ型万能兵器のウフコックらと共に欲望と悪徳が渦巻く産業都市(マルドゥック・シティ)の暗部と戦う。かつて都市の病理に踏みにじられ、事故に見せかけて殺されかけたバロットは再び生きるために、軍事技術によって生み出され、戦争の終結によって廃棄の寸前に追い込まれたウフコックは己の有用性を証明するために。作者の冲方丁曰く「少女と敵と武器についての物語」。

 ジャンルとしてはSF小説。扱うテーマは実存。特に後半のカジノシーンは圧巻であり、その展開は鳥肌もの。衒学的な会話もいい。そして、文庫版の作者あとがきや鏡明の解説にも物語への愛が溢れている。

 筆者が大学生の時に出会った、最も好きな物語の一つである。不適応者が掴む適応の物語。込められた作者の情熱や思念が、読む者に力を与える。ぜひ多くの人に読んで欲しい。   
    

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