2019年2月24日日曜日

ビンス・カーター:カナダにバスケをもたらした男


 インフルエンザの病床でネットフリックスにて観た映画。2017年。60分。

 1998年のNBAドラフトでカナダのトロント・ラプターズに入団したビンス・カーターがカナダのバスケ文化にいかに大きな影響をもたらしたか、という内容のドキュメンタリー映画。派手なダンクを決めまくるクールな男の存在は、街や、国を巻き込んで大きなムーブメントを起こした。偉大なアスリートには文化的、商業的、教育的、実存主義的な価値があることがよくわかる。彼は世を照らし、人をつなぎ、少年達に憧れを与えた。

 サクッと観ていい気持ちになれる作品だった。地域に根付くスポーツ文化って素晴らしい。
  

2019年2月16日土曜日

HOLES


 アメリカの児童文学作家Louis Sachar著、1998年出版のジュブナイル作品。

 邦訳の『穴』を大学生の頃に読んでいたく気に入り、いつか読もうと思って本棚に眠っていた原作のペーパーバックを英語の学習もかねて読んでみた。わりと楽しく読めた…が、語彙はやはり小説を読むためのものが必要なようで、自分の英語力ではまだアメリカの中学生にも及ばないということを実感した。canteen(水筒)とか、blister(水ぶくれ)とか、spat(spit唾を吐くの過去形)とか、調べて意味を再発見した単語も多く、やっぱ数読まんとダメかと思った。

 内容は、15歳の少年スタンリー・イェルナッツ(Stanley・Yelnats, 名前が回文)が、無実の罪で矯正施設である砂漠のキャンプ地に連れてこられ、炎天下の中でひたすら穴を掘ることを命じられるという内容。理不尽な酷い目に遭うお人好しで愚鈍な少年の苦境、成長、運命の物語である。これだけ書くと味気ないが、伏線のまとめ方や舞台装置が上質なため、読後感は素晴らしい。読み終えた後に物語の構造を検討すると、よく出来てるなと唸らされる。

 読書中級者の日本人諸氏には日本語訳を勧める。純粋にいい物語であり、心の滋養になる。
        

2019年2月10日日曜日

私の名前は高城 剛。住所不定、職業不明。


 『多動日記』を読んで以来、遅ればせながら自分の中で高城剛ブームが来ているので読んでみた。2011年発行で、Q&A形式で高城剛が己の来歴、思想、ビジョンなどを語る書籍。

 この本の中で話題になっていると思われる2010年頃には、彼は拠点をヨーロッパに置き、世界中を移動し続けていた。思えば奇遇にも、当時大学生だった私もまた、思いつくまま、気の向くままに海外や日本国内を旅行しまくっていた。中田英寿がサッカーを引退して放浪していたのに憧れたからかもしれないし、旅する投資家ジム・ロジャースの本を読んで感銘を受けたからかもしれない。ちょっとしたシンクロニシティを感じる。時代の空気だったんだろう。

 全てとは言わないが、彼の思想や感性の中には自分の理想に重なるものが多い。知識を積み上げ、体験を重視し、己の心の在りよう意識しながら、世界の理解を目指す。変人であることは疑いないが、彼はずっと未来を見ている。明るく、楽しく、冷徹で目で。そして何かを創造しようとしている。人の心を照らすものを。誰にも届かない。誰も傷つけない。私もまた、そんな風でありたい。
   

2019年2月9日土曜日

バーフバリ


 新千歳-福岡の往復の飛行機の中で視聴。2015年に公開された前編(邦題『バーフバリ 伝説誕生』)、2017年に公開された後編(『バーフバリ 王の凱旋』)からなるインド映画である。

 巨大な滝の麓の集落で育った主人公のバーフバリは天真爛漫で実直な青年だが、懸想した女を追いかける過程で偶然にも己の背負った運命を知り、マシュマヒティ王国との戦いに身を投じる。ロマンス、運命、復讐、王位継承、大迫力の戦闘シーン…といった王道の娯楽の要素をこれでもかと詰め込み、4時間を超える長尺ながら終始勢いは衰えず、目が離せない展開が続く。

 これは、インドのヤバい感性に、莫大な資本とハリウッドの映像技術が惜しみなく注ぎ込まれた傑作である。ツッコミどころは満載だが、観終わった後の高揚感は比類ない。帰路の便で新千歳空港に降り立った私の心の中はぽかぽかと暖かく、歩きながら内容を思い出しては頬が緩みっぱなしだった。

 主人公のバーフバリについて、私に本作を勧めた若い女医は「あれが本当のイケメン」と話していた。私もそう思う。最近の若い奴はあれを見て何かを感じ取って欲しい。