2018年9月24日月曜日

U.S.A.


 2018年に再ブレイクを果たしているDA PUMPの新曲。

 宴会の余興のために踊りの練習をしていたが、多幸感が凄かった。サビ以外は一見とっつきにくくて難しいが、リズムに体の動きが合うようになるにつれ、脳髄の奥から快楽物質が溢れてくるようになる。連続で踊ると汗だくになりエクササイズにも最適。

 作品としては、狙った「ダサ格好よさ」こそが今の時代にマッチしているのだろう。90年代や、それ以前にあった世界への懐かしさを含め、かつて存在した大いなる輝きへの憧れ。かつてそれを体現し、その後の苦渋をも知ったであろうISSAが一生懸命に踊る姿は、その歴史を知れば知るほどに胸を打つ。

 小難しい理屈を超えた、ナンセンスで音楽的な生きる歓びがここにはある。
 多くの人が真似し、流行っているのも必然であろう。

   

2018年9月2日日曜日

犬の心臓・運命の卵


 ソヴィエト体制下で発禁処分となっていたロシア人作家ブルガーコフの掌編2つ。

『犬の心臓』
 権威ある大学教授である脳外科医が、野良犬に人間の脳下垂体(脳にある内分泌器官)と睾丸を移植したところ、犬は次第に人間のような姿に変化して言葉を話すようになり…という話。1920年代に執筆されたようだが検閲を受け発禁となり、作者の死後に出版された。

『運命の卵』
 権威ある科学者が、卵の孵化を促進する光線を発明したが、政府当局に目をつけられ装置を没収されてしまう。無教養な農夫がその光線を鶏の卵に使用して大量生産を目論むが…という話。1925年発表だが、1930年代後半に発禁処分となった。

 解説によると、いずれの作品も「実験の失敗」が描かれており、共産主義革命後のロシアの体制の批判する内容になっているらしい。両作品ともに、優秀な科学者の理想や暮らしをセンスのない下層民が出しゃばってきて滅茶苦茶にする、という雰囲気が通底している。この苦々しさは、ブルガーコフが革命後に感じていたことだろうし、ロシア中の知識階級が感じていたであろう共通の感慨であろうと思われる。壮大な社会実験である共産主義革命が失敗に終わるというのは20世紀後半に明らかになるわけだが、当時を生きる人々にとって救いのない状況であったことがよくわかる。

 ソ連時代のロシアの雰囲気を知る物語として、良質ではないかと。